深呼吸する言葉・コーヒーの手触り
凄いコーヒーを飲んだ。
居心地よく調和された、美学のある空間で。
薫りも舌触りも喉ごしもあと味も
淹れた水の薫りさえ感じられる存在感。
コーヒーに手触りがあると知った。
深呼吸する言葉・改札まで
遠回りになっても反対方向でも
いつもそう。
改札まで送ってくれて
見えなくなるまで手を振るから
ふと駆け戻りたくなるじゃないの。
深呼吸する言葉・母さん、たいへんだと思うけど
小さな弟の体が心配で
18歳になったきみはわたしに頼む。
家で作ったものを食べさせてくれ。
たいへんだと思うけど、と。
わたしは黙ってそれを請け負う。
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コンビニで長期バイトしてる長男が
(ロクに家にも帰ってこないくせに)
とつぜん切り出した。
もうコンビニのおにぎりや弁当は
これから体ができてく小さな弟には食べさせないでくれ。
母さん、たいへんだと思うけど
あいつには手作りの飯を食わせてやってくれ。
多くは語らなかったし
普段遊んでもやらないくせに
真剣に弟の心配をしてるから
わたしも本気で、解った、と請け負った。
深呼吸する言葉・ためらい
声が聴きたい、
ただそれだけで
電話をしてもいいものかと
やはりためらう。
あなたに尋ねたら
きっと笑い出すと思うけど。
深呼吸する言葉・飴色の玉葱
料理が好きなのは
美味しいものが食べたいから。
別にそこまでしなくてもいいんだけど
カレーの玉葱は飴色になるまで。
深呼吸する言葉・地球儀の前で
明後日は地球儀の前で待っていて。
そんな待ち合わせ場所を
考え抜いた末にする
ふしぎなひと。